足の指や足関節の機能は歩行へ大きな影響を及ぼしています。足部の変形によって歩行にどのような影響があるのかをまとめました。足浴を行う際の観察に活かして頂けると光栄です。
歩くときに重要な足(足部)の機能
歩くときの足部の機能には、大きく分けて
- 足の指
- 足首
- 足のアーチ
が大きく関係しています。それぞれどのように関係しているのでしょうか。
足の指(足趾:そくし)
足の機能において、足の指(足趾)は重要な役割を果たします。推進力を前に伝えるために地面に食い込ませるように歩くときに役立ちます。また、立って直立する姿勢で、足を動かさず手を前方に伸ばし、前方へリーチするようにすると自然と足の指が曲がって地面を捉えるように動きます。
これは、転んでしまわないようにバランスを取るために足の指が重要な役割を持つことを意味します。歩いているときにも、足先を持ち上げる際には足の指が伸び、地面を後ろに蹴って前方への推進力を得る際は曲がります。
よって足趾に何らかの異常がある場合は、
- 転倒しやすい
- 長距離歩けず、疲れやすい(歩行効率の低下)
が考えられます。
具体的には、外反母趾(骨の異常)や爪の形状の異常によって足趾の機能低下が懸念されます。
足関節
足関節は一般的には”足首”と呼ばれる部位です。通常、足関節は歩くときに底背屈(足先を下に動かす=底屈、足先を上に動かす=背屈)して体を前進させるのを補助しています。
ベッドに寝ている期間長いと足首の拘縮が進み、この足関節の底背屈機能がなくなってしまいます。歩くときだけではなく、立つときにもある程度の足首の動きが必要なので、足首が動かなくなると、立ったままの姿勢(立位)を取ったり、ベッドから車椅子へ移る動作が自分一人ではできなくなってしまいます。
足のアーチ
足の裏には土踏まずなどのアーチがあり、足を蹴り出す際のバネの役割と、着地したときの衝撃を吸収することに役立っています。土踏まずは足の骨と筋肉によって形成されており、足の指の筋力低下によって土踏まずがなくなってしまうことがあり、扁平足と呼ばれています。
また、扁平足は足の縦のアーチが崩れた状態ですが、足の指の間(横のアーチ)が崩れた状態を開張足といいます。扁平足や開張足がある方は、先天的な影響もありますが、普段歩く機会が少ない方に比較的多い傾向にあります。
歩行に影響のある足(足部)の状態 一覧
歩くときに影響のある足の状態一覧を以下に記載します。
足首の関節可動域低下(拘縮)
寝たきりの期間が長い状態、いわゆゆる”廃用症候群”で非常に多いのが、足首に拘縮が発生することです。多くは底屈方向に曲がったまま拘縮します。足首に付着する筋肉として下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)がありますが、この筋肉は非常に大きい筋肉であるため、不使用期間が長いと逆にすぐに短縮してしまい、足首が底屈(足先を下に向ける)した状態で拘縮してしまいます。
足首が底屈位で拘縮すると、歩く際に足首が使えなくなるのはもちろん、それ以外にも
- 立ち上がり
- 移乗(ベッドから車椅子など)
- 立ったままの姿勢を維持すること
が困難になります。また、足首の関節が固くなると、歩くときに股関節や膝関節に過剰な負担がかかるため、歩くために重要なほかの関節の変形なども懸念されます。
扁平足・開張足
足の裏の縦のアーチが崩れた状態の”扁平足”や横のアーチが崩れた状態の”開張足”、どちらも歩行効率の低下が起き、歩くときの蹴り出しが弱くなり、足部による衝撃吸収が行えなくなるので、歩行効率が低下し、疲れやすい・長距離歩けないという状態になりやすくなります。また、扁平足や開張足がある方は外反母趾になりやすいといわれているため、注意が必要です。
肥厚爪
肥厚爪(ひこうづめ、ひこうつめ、ひこうそう)とは、手や足の爪が分厚くなる状態のことです。肥厚爪の状態を放置していると、爪が剥がれやすくなったり、割れやすくなったりします。重症化すると靴を履くたびに爪が痛み、歩行や外出を控えるようになるケースもあります。
原因としては、
- 足に合わない靴を履いている
- 深爪(爪の切り方が間違っている)
などで爪に過剰な負担が掛かり続けると厚い爪になってしまうことがあります。深爪にしてしまう癖がある場合、むき出しになった爪の下の皮膚が盛り上がり、爪の成長が阻害されることで爪が分厚くなり、肥厚爪になりやすいです。
深爪による肥厚爪を予防するためには、爪を適切な形に整えることが大切です。四角形に丸みをつけたスクエアオフカットにすることで、外部からの衝撃による爪への負担を抑えられます。スクエアオフカットとは、爪をまず真っ直ぐに切り、その後両先端の角を少し落として丸みをつける爪の切り方です。爪の長さは、指の高さと同じくらいに揃えるのが深爪の予防としておすすめです。
巻爪
巻爪とは、巻き爪とは、爪が変形して内側に巻き込んだ状態のことです。肥厚爪と同じように、巻爪が痛むため、歩く際に足趾に力を入れることができず、歩行を控えるようになる可能性が考えられます。巻き爪になる原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 先天的な骨格の影響
- 扁平足、外反母趾などの影響
- 爪が乾燥している
- 歩き方に問題がある
- 歩く量が少ない
- 不適切な靴の履き方をしている
- 足に合わない靴を履いている
- 間違った爪切りをしている
このように、巻き爪の原因の多くは肥厚爪と共通します。つまり、巻き爪になっている方は肥厚爪にもなりやすいといわれています。
外販母趾
外反母趾とは、母趾(足の親指)のつけ根が飛び出し、その先が小指側に曲がってしまった状態のことを指します。外反母趾がある方も足趾の親指が痛くなりやすく、足趾を効率的に使えないため長距離の歩行が困難になりやすい傾向があります。
外反母趾は圧倒的に中高年の女性に多いため、ハイヒールが原因と思われがちですが、ハイヒールを履いたことがない男性でも外反母趾になることがありますし、ハイヒールを毎日履いていても外反母趾にならない女性もいます。
生まれつきの足の形と生活習慣が組み合わさって一定の条件を満たした場合、外反母趾が発症するといわれています。放置すると、変形が進行することはあっても自然治癒することはなく、手術が必要になる場合があります。
まとめ
歩くときの足部の機能として、
- 足の指
- 足首
- 足のアーチ
が重要になります。
足関節の拘縮、扁平足・開張足、肥厚爪、巻爪、外反母趾などがあると歩行に大きく影響し、長距離歩けなかったり、疲れやすくなったり、痛みが出たりします。また、それぞれの足部の以上は関係し合っています。
爪や足首に問題があると歩く機会が減り、また足の状態が悪くなるという悪循環に陥る可能性があります。普段から爪の状態を適正に保ち、歩く習慣を持ち、足部をきちんと使って鍛えておくことが予防として重要になります。