寒い時期にお風呂に入るとホッとした気持ちになって心地よいものですよね。簡単にお風呂に入れない方や、身体を温める方法として、看護の現場で行われるのが「足浴」です。今回は看護現場での足浴での方法についてお伝え致します。
足浴の効果
まず、足浴の効果を知っておきましょう。足浴には以下の効果があります。
足の健康状態観察
足浴特有のメリットとして、足の状態から健康状態を把握できるという点が挙げられます。「足は第二の心臓」といわれます。体の末端ということもあり、なかなかじっくりと観察する機会が少ない部位ですが、足浴の際は被介護者の足をじっくり観察できるチャンスです。そこから思わぬ病気が見つかる可能性もあります。
清潔に保ち、感染症を防ぐ
全身浴と同様に下肢を洗浄して爽快感が得られるだけでなく、皮膚を清潔に保ち、感染症などを予防することを目的としています。足の皮膚も汚れたままにしておけば不衛生ですし、雑菌なども発生しやすくなります。
足浴にはそのような状態を未然に防ぐとともに、皮膚を清潔にすることで創傷の治癒を早めるという効果があります。
血行を良くし、血流障害を予防する
足は体の末端にある部位なので、血流が滞りやすいという特徴があります。足浴で足を温めることで全身の血行を良くし、循環機能を高めます。血の巡りが良くなると、老廃物の排泄がスムーズになり、むくみの改善にも役立ちます。
リラックス効果及び睡眠促進効果
足を温めることにより、筋肉の疲れの軽減や、疼痛の緩和効果が期待できます。
また、全身の血流が良くなることで、気分を落ち着かせる働きのある「副交感神経」が優位になり、リラックス効果や睡眠促進効果を得られます。足浴と同時にマッサージを施せば、さらにそれらの効果を高められます。
足浴するときの注意点
足浴には体に良い効果がたくさん期待できる一方で、注意しなければならない点もあります。
身体を冷やさない
足浴は、15分程度を目安に手早く行い、対象者の体を冷やしたり、余分な体力を消耗させたりするのを避けましょう。体が温まりすぎて汗をかくと体温が奪われてしまうので、汗をかかない程度の時間で足浴を行うことが重要です。
また、露出部分を極力少なくして、ひざ掛けやバスタオルなどで保温しながら行いましょう。足浴が終わった後はしっかりと水気を拭き取りましょう。
お湯の温度や力加減に注意する
足を浸けるお湯の適温は39度~42度とされていますが、介護者の手と被介護者の足では感じる温度(体感温度)が異なります。足をお湯に触れさせたら、必ず「温度はいかがですか?」と確認するようにしましょう。
また、足を洗うときの力加減にも注意が必要です。「痛くないですか?」と小まめに声をかけ、被介護者にとってちょうど良い力で洗うように心掛けましょう。
時間帯に配慮する
足浴の効果を高めるには、行う時間帯に配慮することも大切です。
昼間の気温の高い時間帯やお昼寝前などに行うと、被介護者の体にかかる負担を小さくすることができます。全身浴と同様、食後の足浴は血液を皮膚の表面に集めるため、胃の働きが低下し消化不良を起こす可能性があります。食後すぐの足浴は考慮して行いましょう。
足の状態をよく観察する
足浴の際に観察するポイントは、
- 皮膚の乾燥
- 掻痒感(そうようかん=かゆみの感覚)
- 臭い
- 傷、水ぶくれ、ひび割れ、かさつきはないか
- 痛み、むくみ、かぶれはないか
- 皮膚の一部の色の変化はないか(赤い、黒い、赤黒い、紫っぽい)
- 冷たくないか
- 爪の色、形に変化はないか
- 爪は伸びすぎてないか
- 爪の割れ、はがれ、巻き込み、肥厚はないか
などが挙げられます。
介護者は、足浴を行いながら被介護者の足先に何か不調の兆候が出ていないかをよく確認します。特に、白癬(水虫)や爪白癬(爪の水虫)などのトラブルについては注意深く観察してください。症状の度合いによっては、専門医の診察が必要な場合もあります。
足浴の用意及び実施方法
足浴は事前準備がすごく重要です。以下のものを用意してから実施していきます。
足浴で用意するもの
- 大きめの洗面器(足首まで入るほうが望ましい)
- お湯(38~42℃)
- やかん
- タオルまたはバスタオル
- ビニールシート
- 石鹸
- 入浴剤
- 必要に応じて、保湿クリームや爪切り
足浴の実施手順
実際に足浴を行う際の具体的な手順を確認しておきましょう。
1、同意を得る
対象者に足浴する旨を伝え、同意を得てから始めます。足浴の間は自由に動けないため、尿意や便意がないかどうかを対象者にあらかじめ確認してください。できれば、事前に医師や看護師に注意点を確認しておくと良いでしょう。
2、環境を整え、準備する
対象者からの同意を得られたら、周囲の環境を整えます。寒くないように室温は22度~24度程度に設定し、必要に応じて窓やカーテンを閉めます。濡れて困るものがあれば、あらかじめ移動させておきましょう。床に新聞紙を敷き、その上に汚水用のバケツを置きます。
3、足浴を行う体位を取る
対象者の体位を整えます。上半身を起こせるようであれば、ベッドに腰掛け、足底部が床につくようにベッドの高さを合わせます。上半身を起こすことができない場合は、ベッドに横になったまま膝を曲げ、膝の下に枕やクッションをいれて膝を曲げる角度を決め、体の安定を確保します。
ひざ掛けやバスタオルで保温しながら、衣類が濡れないようにめくります。足元に防水シートを敷き、お湯の入ったバケツまたは洗面器を乗せます。
4、足浴開始
足にお湯をかけてなじませてから片足ずつゆっくりと用意したバケツや洗面器に浸水します。石鹸を泡立てて片足ずつ洗います。特に指の間や付け根は洗い残しがないように丁寧に洗いましょう。
両足を洗い終えたら、お湯を汚水用のバケツに捨て、ペットボトルに入ったかけ湯用のお湯をかけて石鹸を流します。片足ずつバケツから出してタオルで水分をよく拭き取ります。必要であれば、ここで保湿クリームを塗ったり、爪を切ったりしてください。
5、片付け
最後に後片付けをします。床や足が濡れていると、対象者や周囲の方が滑って転倒する危険性があります。また、床や足に水分の拭き残しがあると雑菌の繁殖につながり、感染症などの発生を引き起こしやすくなります。水が飛び散っている場合は、必ずしっかり拭き取りましょう。
まとめ
足浴の効果としては、
- 足の健康状態観察
- 清潔に保ち、感染症を防ぐ
- 血行を良くし、血流障害を予防する
- リラックス効果及び睡眠促進効果
などがあります。
足浴するときの注意点としては、
- 身体を冷やさない
- お湯の温度や力加減に注意する
- 時間帯に配慮する
- 足の状態をよく観察する
ことが重要です。足浴の実施は手順がありますが、初めは確認しながら行いましょう。また、足浴の際はコミュニケーションを取りながら、視診、触診だけではなく、会話からも対象者の様子を伺うことも大切です。